本所深川ふしぎ草子 宮部みゆき 新潮文庫
大好きな宮部みゆきの時代もので短編集です。
江戸の本所七不思議を題材にした、7つの物語です。
ここに出て来る岡っ引きの茂七親分は、「ぼんくら」シリーズの平四郎の先輩として、名前だけ出て来る人です。
政五郎はこの人の部下です。
平四郎が尊敬し、頼りにするだけあって、なかなかの推理力と機転の利く人で、そして人情家です。
七つの話も、人情味あふれるお話が多いです。
一案考えさせられたのは、最初のお話「片葉の芦」。
真に困っている人、貧しい人を助けるとはどういうことか?
ただ、その場で何かを恵んでやるか、それともその人が独り立ちできるようにしてやるか。
本当の優しさ、その人のためになる情けのかけ方とは何だろうと、考えさせられるお話です。
「落葉なしの椎」は、親子の情のお話です。
これもなかなかの良作です。
人を殺めて島流しになった父親と、その娘のお話です。
「馬鹿囃子」は、あまりきれいじゃない女の子が、そのために縁談が壊れ、心を病んでしまったお話。
自分をあざける世間の声が、馬鹿囃子に聞こえてしまう、切ないお話です。
どのお話も、人間の切なさ、そして人情が書かれているいいお話ばかりです。
そして茂七親分がいいですね。
「ぼんくら」シリーズでは一線を退いていましたが、まだ活躍しているお話もあるそうだから、こちらも読んでみたいですね。
それにしても、本所七不思議というものがあるとは、初めて知りました。
それに、宮部みゆき先生の時代ものは、どうしてこう、どれもこれもこんなに面白いんでしょうか。
あるときは、大河ドラマのような、あるときは人情味あふれる楽しいもの、またあるときは少し怖い怪異を題材にしたもの・・・・
この作品のような短編集も一話一話傑作ぞろいですし、長編は長編で、読み応えたっぷりなものばかりです。
とにかく多彩で、どれもこれも傑作ぞろいです。
どうしてこんな風に、書けるのでしょうか?
正に天才です。
ますます宮部みゆき先生のファンになる、咲紗でした。
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