泣き童子 三島屋変調百物語参之続 宮部 みゆき
2016年6月25日 角川文庫
大好きな「百物語」シリーズ。いや~、これも面白いです。
全然期待を裏切りませんね。
登場人物たちは相変わらず魅力的だし、全てのお話がいいです。
今回はちょっと新しいタイプのお話が合って、おちかがほかの人が開いた百物語の会に出席するのです。
そこで短い4つのお話を聞くが、どれも印象深いです。
また、5話目には怪物が出て来るのですが、これも新しいパターンです。
この怪物を退治するには、笛使いが笛をあやつり、怪物に自分自身を食わせるという壮絶なモノ。
1話目は笑って笑って・・・ネタバレ覚悟でちょっとだけお話ししますね。
昔、イノシシのメスが何かでそこで傷ついて死んでしまったという池があるのですが、そこに恋人同士が姿をうつすと、絶対に男が浮気するという伝説があるのです。
そこで、結婚を約束した美男美女のカップルが、自分たちの熱々ぶりにはかなわない、とその伝説を笑い飛ばして池に自分たちの姿を映してしまいました。
すると、そのほんの数日後、あろうことが男性の方が、10歳も年上で、子連れで、村一番のブスと駆け落ちしてしまったのです!
自分に自信のあった女性はショックのあまり寝込んでしまい、心配した両親が、別の金持ちの男と結婚させます。
ところがこの男、おとなしくていい人だったのですが、アゴがないのです。
彼女も何かにつけて「このアゴ無し男!」と心の中でののしる始末。
そして彼女は、とっても悪いことを思いつきます。
例の池に、自分とアゴ無し夫をうつして、夫に浮気させて追い出してしまおうというのです。
戸惑う夫を引きずって、その池に連れていき、たっぷりと自分たちの姿を映して大満足。
ところが、イノシシ様はちゃんとその悪い心を見抜いていました。
そして天罰が下るのですが、はたして・・・というお話。
もう笑わずにはいられないお話でした。イノシシの呪い、おそるまじ。
そして題名にもなっている3話目の「泣き童子」はなかなか壮絶でした。
この語り手の男性があまりにも哀れでした。
この子供は結局何だったのか・・・神様だったのだろうか、秋間だったのだろうか。
このまま成長したらどうなったのでしょうか。
愛護は、これも今までになかったが、語り手が警察を呼んでくれと言います。自首するとのこと。
最後のおはなしはしっとりといいお話でした。
今回も全体的に本当に良かったです。
どれもこれも静かな感動があります。
ただおちか自身の恋の話がほとんどなくて残念でしたけれど。