お文の影 宮部みゆき 角川文庫
大好きな宮部みゆきの時代もの短編集です。
今回はちょっと今までと違って、人気シリーズのキャラクラ―が出て来るスピンオフみたいな作品がありました。
私はみんな知っているので面白いですが、知らない人でも全く影響なく読めます。
「坊主の壺」は、これ、まさしく今のコロナの話じゃないかー!
病名はコロリ。コロナとコロリでそっくりです。
どんどん病が広がり、良く手を洗い、消毒し、生ものは食べない・・・など、まるで今のこの惨状を予言しているかのようなお話でした。
「お文の影」は、「ぼんくら」シリーズの、私の好きな、かっこいい政五郎親分とおでこちゃんのお話です。
大人の都合で振り回され、虐待されて、耳まで切られて死ぬお文が辛すぎます。
そしてその影までが迷っています。
辛いお話です。
「博打眼」は、この化け物、作り方から存在まで、かなりおどろおどろしいですが、しかしそれは人間がつくるもの。
おぞましいなぁ。
しかし最後、犬張り子が目玉を一つずつ笊に乗せて、ちょこちょこ歩いていく姿はかわいいです。
ただし、ちょこちょこ歩いて最後、火に飛び込むのだけれど。
「討債鬼」これは「三島屋」シリーズの青野利一郎のお話です。
シリーズの中に出て来る利一郎より男らしいです。
しかしこれもやりきれないお話です。
いくら自分の子供に鬼が巣くっていて、店を滅ぼし、自分も死ぬと言われたからと言って、それを鵜呑みにし、人に子供を殺せというでしょうか?
鬼はこの親に他なりません。
利一郎は何とか一計を案じ、子供を救いますが、今回利一郎の悲しい過去が明らかになります。
「ばんば憑き」これもまたひどい話です。
一見、霊とかそういう話かと思いましたが、実は人間の心がなせることでした。
こういうことが起こりえるかはわかりませんが、人の心の恐ろしさを表しています。
そして、この主人公、佐一郎が今後どうするのか。
本当に村を探し出して、ばんば憑きの丸薬を手に入れ、使うのでしょうか?
なんか、夢だと言いながらもその夢に執着し続け、実行してしまうことを暗示しているのではないでしょうか。
「野槌の墓」は、これまた一軽、実際の化け物たちが出てきます。
化け物にも心があり、その心が壊れてしまうときがあります。
そうなるともう退治するしか道はありません。
なんか「しゃばけ」シリーズを思い出させました。
どの話も、人の心というものの深い業を表していて、哀しいけれど面白い。
重いお話ばかりですが、深くて、心にしみわたりました。
また、ほかのシリーズのスピンオフもなかなか楽しいものですね。
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