陰陽師 付喪神ノ巻 夢枕 獏
2000年11月10日 文春文庫
今回は、男に裏切られ鬼になってしまった女性の話が2つも出てきます。
当時の女性は全くの無力で、ただただ男性の寵愛を待つしかないのです。
男の心が離れても、どうすることもできません。
ただひたすら愛する男が来てくれるのを待つのみ。
その悲しみや悔しさは怨念となり、やがて女性自身をも鬼としてしまいます。
なんて悲しいのでしょうか。
これは江戸時代の大奥でも、まだ同じようなことが起こっていますね。
ひたすら将軍様のお目にかかること、かかればかかったで、今度は男子を生むことでしか、道はありませんでした。
ああ、つくづく昔に生まれなくてよかったです。
そして今回、清明の同業者で、ライバルなのか敵なのかよくわからない、蘆屋道満(あしやどうまん)という人物が出てきます。
この人もなかなかの実力者で、言わずと知れた曲者です。
見かけは相当汚いのですが、上流階級の人々の中にちゃっかりと入りこんでいます。
さあ、この先どうかかわってくるのか・・・。
また、歌合せで負けた人が霊となってさ迷い歩くお話がありました。
これ、どっかで聞いたような気が・・・。
う~ん、思い出せない。ま、いっか。
これは清明も、もうさまよわせたままにしておくしかないとの意見。
まあ、悪さをするわけではないし、本人もさまよっていれば満足なのかもしれませんが、でもなんとも哀れです。
恨みや悲しみを背負って、一体いつまでさまよい続けるのか・・・・。
決して救われることはないのですね。
清明の力をもってしても・・・・。
人間、死んだらスッと成仏したいものです。
相変わらず、清明と博雅のコンビがいいですね。
この2人、事件現場(?)で行くとき、いつも
「ゆくぞ」
「うん」
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった
という表現をされていますが、この短い会話もその時によってニュアンスが全然違ってきます。
この短い文ですべてを表すところ、うまいと思います。
言葉少なだけれども通じ合い、信じあう清明と博雅。いいですね。
ただ、このマジメ、誠実、いい人が服を着て歩いているようなこの博雅、こんなに清明とばかりくっついていたら、一体いつになったら結婚できるのでしょうか。