異邦の騎士 改訂完全版 島田 荘司
1998年3月15日 講談社文庫
いや、これは・・・
凄い!凄すぎる!!!
なんか島田先生の作品を読むと、いつもこういっている気がしますが・・・
芸がないなぁ。
でもほんとに凄いんですよ!
何が凄いって?
最初から最後までです!
最初の一ページからグイグイと引き込まれ、咲紗は持病があるためあまり夜更かしをしないようにしているのですが、してしまった・・・。
だって止められないんですよ、もう面白くて面白くて、ページをめくる手を止めることができないのです。
ああ、早く寝なきゃ具合が悪くなる~、と思いながらもついついやってしまいました。
この作品、発表したのはずっと後(書いてから9年後だそうです)だけれど、実質的に作者が初めて書いた小説だとか。
これが初めて?
天才か!
まさしく天才としか思えません。
私が読んだのは改訂版ですが、それでもこのアイデアとトリック、結末の意外性は当然初期のものであり、その実力はものすごいです。
そして何より、主人公の心情・・・
最初目覚めて、記憶がないと気づいた時の不安や焦り、ノートを見つけた時の混乱、良子の病院を探し回っているときのあの狂気にも似た逼迫感・・・
ものすごい表現力で、読んでいるこっちも時間を忘れ、現実を忘れ、ぐいぐい引き込まれるのです。
そしてこの謎の真相には度肝を抜かれました。
ちょっと読んでいて、ヘンだな、と思うところがあったことはありましたが、まさかああいうこととは・・・・・。
そして主人公がちょっと、いや、かなりかわいそうです。
ところでこの作品、第一作で、御手洗潔がまだ20代だというから、親友の石岡が出てこないのかな?と思っていたら
出てきた~!!
しかもあんなカタチで~!!!
もうびっくりです。なんかびっくりしすぎて疲れました。
主人公と御手洗が聞いていたチック・コリアの「浪漫の騎士」聞いてみました。
ほほ~、なるほど。こういう曲か~。
なんて、このブログを読んでくださっている方にはさっぱりわからないですよね。
私もジャズは全然わからないのですが、まぁ、早い早い。ピアノがすごいですね。
この曲、嫌いじゃないです。
まさに御手洗の原点といった作品です。
そして、間違いなく傑作です。
この主人公の何とかわいそうなことか。
記憶喪失で辛く心細い思いをしているのに、それをここまで悪用されるとは。
最後には何とか少し希望が見えますが、永遠に残る傷を負い、人生までも変えられてしまいました。
しかし世の中には、ここに出て来る一家のように人生のどん底を生きる人が多く、良子のように常に誰かの犠牲になり、それをあまり不幸とも思わず底辺を生き続ける女性は多いでしょう。
そこから這い上がろうともがいても、アリ地獄のように落ちていきます。
せつない思いの残る、でも最後には少し希望が見える、傑作間違いなしの作品です。
それにしても、島田先生の作品は人気が高いせいか、ブックオフに全然置いてないんですよね~。
入荷してもすぐ売れてしまうのでしょうね。
この「異邦の騎士」も探していた作品ですが、全然なくて、ようやく見つけた時は思わず「あった~♪」と言って、ガッツポーズをしてしまいました。
いや、嬉しかったですね~♪
ラッキーなことに、ほかの作品も少しあったので迷わず購入。
そんなに読みたきゃ、普通に本屋で買えよと言われそうですが・・・。
島田先生の御手洗潔シリーズ、まだまだ読んでいきますよ。
だって、大好きですから。