びっくり館の殺人 綾辻行人
2010年8月12日 講談社文庫
前作「暗黒館の殺人」と比べると、非常に短く感じる作品です。
「かつて子供だったあなたと少年少女のためのミステリーランド」という企画で書かれたそうです。
今までと違い、そうだなぁ・・・、小学5~6年から中学1~2年くらいを対象に書かれているようです。
だから今までの「館」シリーズを違って、まず、挿絵付きになっています。
ちょっと不気味な絵なのですけれどね。
もちろん語り手も子供、登場人物も極端に少なく、かつ子供が多いです。
「館」の見取り図も、いたってシンプル。
内容も、大勢が殺されまくるという「館」シリーズの特徴は影を薄め、殺人も一回だけ、トリックもシンプルです。
・・・・・が!
最後に、ゾゾォーッと鳥肌が立ったのも、シリーズ初なのです。
やはり「館」シリーズ、子供のためのものでも、あなどれません。
そしてなんと、ようやくこのシリーズの中に、ネットが登場します。
「迷路館の殺人」から17年以上たっているという設定のようです。
大分現代に近づいてきました。
ということは・・・鹿谷門実は一体何歳になったのでしょうか?
今回、鹿谷門実は、直接事件にかかわることはありませんが、びっくり館に興味を抱く風変わりな人、という風に登場してきます。
また、この事件のすぐ後に、あの阪神淡路大震災が起きたということになっています。
登場人物の一人が、そのために死んでいます。
不思議な噂の多い「びっくり館」を訪れ、そこで病弱な少年トシオと出会う主人公の少年。
びっくり館の中に入ると、そこには大きくて不気味な人形「リリカ」がいます。
トシオの姉「リリカ」と同じ名前をもつこの人形が、物語の大きなカギを握ります。
まあまず、徹底的にびっくり館の住人達には救いがありません。
どの「館」の住人達もそうなのですが、裕福であっても決して幸せにはなれない。
身体が弱いために閉じ込められて育った俊生は、やはり姉リリカと同じ狂気を、内に育てていったのでしょう。
そして、衝撃のラスト。
読んでいて、鳥肌が立つなんて初めてでした。
いや、これ、一体この先どうなるの・・・・?という、非常に後味が悪いラストです。
さすが「館」シリーズ、いろんな意味で読者を裏切りませんね。
さて、この大好きなシリーズも残すところ「奇面館の殺人」のみ。
全部で10作品書く予定だそうですが、まだ出ていないので、次の「奇面館」で実質ラストです。
早く読みたいような、シリーズが終わってしまうのが寂しいので読みたくないような・・・
複雑な気持ちです。