危険なビーナス 東野圭吾
2016年8月26日 講談社
この本は、私が入院しているときに、会社の上司が退屈だろうからと、お見舞いで持ってきてくださった本です。
お見舞いに東野圭吾先生の本を選ぶなど、上司のなかなかのセンスに感心しましたが、実はこの本、当時ついていた帯広告を見て、どろどろの不倫系だと思い、敬遠していました。
その帯広告はうっかり捨ててしまいましたが、そんなイメージを抱かせるような文章がでかでかと書いてあったのです。
どろどろ系は苦手な私。しばらく放っておき、退院して1年くらいしてから、ふと、やっぱ読まないともったいないよなぁと思いなおし読んでみたところ、全然思っていた内容と違っていました。
少しミステリーあり、不倫のふの字もでてこず、淡い恋はありますがドロドロしたものではなく、全体としては実に爽やかで後味のよい作品でした。
帯広告というのは、その本を買おうか買わないか、それを読んで判断することが多いので、内容をきちんと伝えてほしいですよね。あの帯広告では、書店で見ても、まず自分では買わなかったでしょう。
おかげでこんないい作品にめぐり合い損ねるところでした。
主人公は獣医さん。2匹のチワワのママである私としては、患畜として訪れる動物たちの病状がなんとも気になるところでした。
うちの女の子と同じ名前の猫ちゃんが出てきて、おもわず感情移入。この子が元気になりますように、と祈ってしまいました。
主人公の勤める動物病院に、数年間連絡を取っていなかった、父親違いの弟の妻を名乗る女性から電話がかかってきます。
弟が結婚していたことを知らなかった主人公は、その女性から、弟が行方不明になっていることを知らされます。
とりあえず、その女性と会ってみた主人公ですが、この女性がまたなんとも魅力的だったわけですよ。
若い美人なのはもちろんのこと、物おじしない態度や、屈託のない話し方、それでいて頭の回転が速い。主人公は知らず知らずのうちに、彼女にひかれていきます。
そして・・・彼女と一緒に弟の失踪の謎に迫らざるを得なくなった主人公。最後に待っている、衝撃の(!?)結末。
さすが東野圭吾先生の作品です。最後まで飽きさせることなく、一気に読んでしまいました。
印象的だったのは、主人公が弟の奥さんに、彼女の友達が依然ミニブタを飼っていて、かわいかったという話を聞いたときにした、その後たどったであろうミニブタの運命・・・
一年で百キロくらいにまでなってしまうので(ミニじゃないだろ)飼えなくなり、お肉に変貌し、誰かの食卓へと旅立っていくのです。
しかしそのミニブタが、主人公の未来を運命づける(?)こととなるのですよ、これが。
とても良質な作品で、満足しました。また愛読書が増えました。