ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)① 塩野七生
2004年9月1日 新潮文庫
知れば知るほど、かっこいいカエサル。
カエサルが優れていたのは、なんといっても情報を集めることの重要さをよく知っていたことでしょう。
カエサルは情報力を駆使して、ガリア人やゲルマン人の動き、そして地図も完全に頭の中に入っており、その民族性全てを知り尽くし、さらに遠いローマの現状も正確に把握していました。
それに何より、彼の持つカリスマ性や人望の厚さは匹敵するものがいなかったのではないでしょうか。
彼はもし兵士たちが、ローマの兵士にあるまじき行動をしてしまった場合、彼らに対して、決して怒るということはせず、冷静に叱った。
そしてどんなときも、冷静さを失わず、状況を把握し、毅然と的確に指示を与えるその姿は、兵士たちの彼に対する尊敬の念を強め、彼のために戦おうという気概を彼らに与えたのです。
その真逆だったのが、クラッススでした。
彼はシリアに属州総督として行き、その隣国のパルティア遠征に乗り出しました。
が、なにしろお金と地位はあっても人望はなく、指導力もない彼のこと。
カエサルは、自分の部下であるクラッススの優秀な長男に、騎兵を一千騎つけて父のもとに行かせ、ポンペイウスも、自分の腹心の部下たちを数人、彼についていかせました。
しかし情報の重要さを軽んじていたクラッススは、当然のことながら大失敗します。
優秀な長男や部下たち、そして自らの命が犠牲となりました。
しかし、クラッススのローマ軍を破った、パルティアの貴公子と呼ばれたスレナスは、国のために尽くしたにもかかわらず、彼の名声が自分をしのぐことを恐れた王に殺されてしまいます。
カエサルのおかげでゲルマン人からの侵攻の恐れがなくなったら、今度はローマの覇権下にいることが不満になってきたガリア人が、部族同士手を結び、ローマに反旗をひるがえしたのです。
この総司令官が、ヴェルチンジェトリックス(なんて長い名前、呼ぶときいちいち大変ですね)だり、彼はカエサルも認めるほど、優れたリーダーでした。
しかし部族それぞれ一貫性がないため、これをまとめ、いやどっちかというとなだめすかしながらの戦いは相当大変だったでしょうね。
さて、ちょっと長いのでこの続きはまた次回にします。