ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)② 塩野七生
賽は投げられた
さて、続きです。
ついに、カエサルとヴェルチンジェトリックスの対決となります。
カエサルは戦闘の時はいつも、紅の大マントをはおります。
敵の注意を引く危険はあっても、これだと味方の兵士からいつでもどこでもカエサルの姿が見えるからでした。
自分の身の危険を顧みず、紅の大マントを風になびかせ、毅然と頭を上げて先頭に立ち、指揮を執るカエサル。
かっこいいー♪ キャー♪
兵士たちはその姿に勇気を与えられ、戦闘の気力を振り絞り、勇敢に戦い抜くのでした。
そしてローマ軍はヴェルチンジェトリックスの軍に大勝し、ヴェルチンジェトリックス(だから名前が長いんだってば)は自らガリアの民を助けるため捕虜となり、6年間ローマの牢に入れられ、処刑されました。
しかしこの人は、カエサルも認める、真の勇者だったと私は思います。
見事、ガリアを制圧したカエサルですが、その間ローマの元老院は三頭政治の一頭、クラッススが死んだため、カエサルとポンペイウスの引き放しにかかり、ポンペイウスを元老院派に引き入れることに成功します。
ローマのためにこんなに苦労しているカエサルなのに、いくら反元老院派だからって、ここまでやるかというくらい元老院はカエサルに対し、まるで犯罪者扱い。
たしかにカエサルは指示に従わなかったり慣例を無視したりすることはあっても、それもこれもみんなローマのためです。
しかし、民衆からの絶大な人気を誇るカエサル憎しの元老院は、ついに「元老院最終勧告」を出し、元老院に従わなければ国賊とみなす、としました。
そうなるともう内乱が起きることは予想されます。
どうやら元老院は、ポンペイウスが戦ってくれさえすれば、天才と呼ばれたポンペイウスですから、簡単にカエサルを倒すことができるとたかをくくっているようなところがあったようです。
一方カエサルは、元老院に従わないままローマに戻る、つまり、ローマの国境、ルビコン川をそのままわたると国賊となり処刑されてしまいます。
ルビコン川ってテレビで見たことありますが、「えっ、これが?」と思うほど小さくて細い川なんですよね。
しかし、ローマにとってもカエサルにとっても、重要な意味を持つ川でした。
彼は内乱を覚悟し、ルビコン川の前で彼に従う覚悟でいる兵士たちに、あの有名なセリフを言います。
「進もう、神々の待つところへ、我々を侮辱した敵の待つところへ、賽(さい)は投げられた!」
う~ん、面白い。ドキドキします。
正に、事実は小説よりも奇なり。
これからどうなる、カエサル?