最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵 椹野道流
2014年10月25日 初版発行 角川文庫
理不尽な理由で芸能界から追放された、元イケメン俳優が、ある人情味あふれる料理人と出会い、彼の店「ばんめし屋」で働くようになります。
ドラマ化もされたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
この作品はシリーズ物の第1巻なので、まだ登場人物の紹介という感じですが、最後の章でこの題名の納得がいきました。
料理人、夏神(なつがみ)の店には幽霊が現れます。しばらく現れては消え、また別の幽霊が現れる・・・という具合なのですが、主人公、海里の出会った青年の幽霊は、なんと自分のファンだったらしいということが分かります。
幽霊が消えるというのは、決して成仏するものではなく、たとえるなら、生きながら獣につま先から食われるようなもの、なのだそうです。
徐々に虚無が己を食んでいくのを、最後の瞬間まで味わい続けて消えるという恐ろしいものだとか。
心優しい海里は自分のファンでいてくれた青年が、そんな苦しい思いをしていることに衝撃を受け、なんとか彼の苦しみを和らげようとします。
そこで思いついたのが、青年の死とも関連する、だし巻き卵を彼のために作ってあげること。
さてどうなるか・・・ということなのですが、しかし、そもそも幽霊って、ご飯食べられるのでしょうか・・・・・・?
う~む・・・、ま、いいか。
人情溢れる物語、ではあるのですが、付喪神につかれたしゃべるメガネが出てきたり、ファンタジー色も強くてユニークです。
しかし料理というのは奥深いですね。やってもやっても正解等ありません。
なーんて偉そうに書いてますが、実は咲紗、
料理なんて死ぬほど大っ嫌いなのです!
料理なんてするくらいなら食べない方がまし、というくらい嫌いです。
何がいやって、料理の間中、ずっと立ってなきゃならないのがまず嫌。
じゃあ座ってやれば、と言われそうですが、それだとまたやりにくいのです。
切るのも嫌い、むくのも嫌い、焼くのなんて待っていられないから嫌い。
味付けは、我ながらそこそこ上手だと思うのですが、何しろ嫌いなもんだから、料理に一切の愛情がなく、すべていい加減。
おいしく作ろうという気持ちが全くわいてきません。
料理好きの方がつくづくうらやましい・・・毎日作るの苦にならないでしょうからね。
私なんて、もうノイローゼ寸前、娘がこの春から下宿したので、毎日作る必要がなくなったのが救いです。
前なんて、この私がお弁当まで作っていたのです・・・辛かった。
でも、こういう料理にまつわる物語は嫌いではありません。
自分にないものを求めるということなのでしょうか。
それにしても、ここに出てくるだし巻き卵、おいしそうだったな。
さてこのシリーズ、まだまだ続くようです(10巻まであるとか)。
そのうち、夏神さんがなぜ「ばんめし屋」をやり始めたか、などの話もきっと出てくるのでしょう。
どんどん読んでいきたいと思います。