ローマ人の物語Ⅸ 賢帝の世紀② 塩野七生 新潮社
さて、続きです。
トライアヌスの後に皇帝となったハドリアヌスは、思いがけず皇帝となったトライアヌスと違って、皇帝になる野望を持っていました。
この人も良く頑張った人で、あの広大なローマ帝国を、隅から隅まで視察の旅で大半を過ごしたのです。
もちろん見るだけじゃなく、改善策を講じながらの旅でした。
だってローマ帝国ったって、当時もうほぼヨーロッパ大陸全部に、アフリカ、イギリスとものすごいなんてもんじゃない帝国の大きさだったから、全部回るなんて、そりゃ一生分かかったでしょう。
国のために本当に頑張ったハドリアヌスですが、なんだかいつも側に美少年を侍らせていたらしいです。
しかしその美少年、だんだん大人になっていくことに苦しみ(そりゃ、おじさんになったら捨てられるもんねぇ・・・)、自殺してしまったとか。
哀れですねぇ。
まあそれでも善政を施し、ユダヤの反乱までしっかり押さえたハドリアヌスだけれど、元々ちょっと気難しいところがあったのか、長年の旅がたたって起き上がることもできない病気になった時、かなり手におえない性格となってしまいます。
病気のせいだから仕方ないですが、そういうことで、市民からの人気は落ちていきました。
あんなに頑張ったのにねぇ・・・
そして、アントニヌス・ピウスを養子にし、彼に看取られて死にました。
このアントニヌス・ピウス、非常に優れた人格の持ち主でした。
それにこの人はついていました。
トライアヌスが公共事業をやりまくり、ハドリアヌスが旅をしまくり、防衛に力を注いでくれたおかげで、特に何もすることがなく。ローマにとって、とても幸福な時代だったようです。
このアントニヌス・ピウス、本当に品行方正で、何一つ目立ったことはしませんでした。
よって、塩野先生もこの人にさいたページ数は、まあ少ない、少ない。
トライアヌスとハドリアヌスは、けっこう書いていらっしゃるのだけど。
しかし、暴君ネロや、数年にわたる内乱の時代を経て、ヴェスパシアヌスの時にやっと落ち着き、5賢帝の時代になったのはいいことです。
今まで、カリグラやネロなどを見ていると、悪い皇帝というのは、その母親が悪かったり、妻が悪かったりと、周りの女性にかなり影響を受けるようです。
悪い皇帝が悪い妻や母親をつくるのか、悪い妻や母親が悪い皇帝をつくるのか・・・・
トライアヌスもハドリアヌスもアントニヌス・ピウスも皆、もちろん自分もですが、奥さんが問題を一切起こしませんでした。
ハドリアヌスの場合は、旅ばかりしていて、ほとんど奥さんと過ごさなかったようで、夫婦仲もあまり良くなかったようですが。
しかし皇帝というのは、つくづく大変な仕事ですねぇ。
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