咲紗の、本とチワワとコーヒーと ~愛すべき本たちとの日々~

読書大好き咲紗が、読んだ本の感想やご紹介をしていきます

ローマ人の物語 パクス・ロマーナ② 塩野七生

2014年8月22日  新潮社  kindle

さて、続きです。お待たせいたしました。

初代皇帝として、優れた手腕を発揮し続けるアウグストゥス

しかしこの人、ものすごく身体の弱い人でした。

お腹が弱かったらしく、カエサルに連れられて戦場に行った時もお腹を壊しまくっていたとか。

だからカエサルも心配になって、アグリッパを側につけたのでしょうか。

しかしこのアウグストゥス、自分が身体が弱いということをよく自覚して、絶対に無理をしたり、不自然なことをしない人でした。

お腹が弱いので食も細く、低血圧なので朝はダメ、暑いのも寒いのもダメ、風が強ければ風邪をひき、陽にあたれば頭が痛くなるという人でした。

でも意外と長生きします。当時で77歳というのは長寿な方ですよね。

食が細いので食べたいときだけちょっとだけ食べ、すぐどこにでも横になって休み、いつも暖かい服装をしていたとのこと。

人間、あまり無理をして身体を鍛えようとしなくても大丈夫ということなのでしょうか。

この人の悲劇は何といっても、自分の血筋にこだわりすぎたことでしょう。

アウグストゥスカエサルの妹の孫でしたが、彼の父親自身は騎士階級の出身で、カエサル一族のような名門貴族とまではいかない家柄でした。

カエサルの養子になり、ユリウス家を継いだにもかかわらずそのコンプレックスが抜けなかったのでしょうか、何としてでも自分と血のつながりのあるものを後継者にしたかったのです。

彼には一人娘のユリアがいましたが、その他に妻リヴィアの連れ子であるティベリウスドゥルーススがいました。

この2人、非常に優秀だったにもかかわらずアウグストゥスは養子にしませんでした。

養子=後継者という意味合いがありましたから、いくら子供のころから自分が育ててきたとしても、血のつながりのないものは自分の後継者にはしたくなかったのです。

この長男の方のティベリウス、優秀で真面目で人望もある、非常に優れた人物で、とても愛している奥さんがいました。

にもかかわらず、夫のアグリッパに先立たれ若くして未亡人になってしまったユリアの夫にさせられるために、無理やり離婚させられてしまうのです。

か、かわいそう・・・・・。ひどすぎます~。

しかし義理の父であり、皇帝であるアウグストゥスの命には逆らえませんでした。

このアウグストゥス、政治の面では細かな気配りを見せますが、人の心、とりわけ愛情面では割と無神経な面があったそうです。

だから女性にもてなかったんですねぇ。

ティベリウスはその後、町で偶然元奥さんを見かけ、その後姿が見えなくなるまでずっと見送り、以後はあまり町へ出ないようにしたとのこと。

かわいそすぎるよ~(泣泣泣)

ただただアウグストゥスの孫をつくるためだけの種馬にさせられたのです。

しかしユリアにしても、前夫アグリッパとの仲は良く、突然死なれてしまった悲しみも癒えないままに、こちらもむりやりティベリウスと結婚させられてしまったのです。

もともとこの二人、アウグストゥスの前妻の子と、現妻の連れ子という関係。

なんか微妙な関係であったところに、むりやり結婚させられたのですから、夫婦仲がいいはずはありませんでした。

アグリッパとの間にすでに5人も産んでいるにもかかわらず、まだ産めと強要されるなんて、ひどすぎます。

それでもなんとか子供は1人産まれましたが、すぐ死んでしまい、以後2人は寝室も別だったといいます。

このティベリウスドゥルーススの兄弟は、武将としてもとても優れていました。

アウグストゥスは、ゲルマン人の脅威からローマを守るため、防衛線をドナウ河からエルベ河に変え、ゲルマン人をローマに取り込もうとしました。

しかしゲルマン人は強く、なかなかうまくいきません。

そして、その争いの中でドゥルーススを失い、ユリアとアグリッパの間に産まれた2人の男の子の孫も失います。

家庭環境がつらく、愛する弟まで失ってしまったティベリウスは失意のあまり、引退して田舎に引っ込んでしまいます。

もちろんユリアとは別居。その状態が一生続きます。

挙句の果ては、ユリアとその娘が自分の作った不倫ダメ法に基づき、ローマを永久追放されてしまいます。

そもそもユリアが不倫に走ったのは、アウグストゥスが無理やりティベリウスと結婚させたのが原因なのです。

かわいそうなユリア・・・。

ところで、余談ですがこの時代の女性の名前というのはあってないようなもので、例えばユリウス家に産まれた女性はみんな「ユリア」なのです。

要はその家の女、という意味合いでしかなかったのでした。

他の女性もみんな名前は、産まれた家の名前がついていて、みんな同じでした。

いいかげんな・・・。そんなんだったら、「ユリア」って呼んだら、その場にいる女全員「はーい」って振り向くことになるでしょうに。ややこしい。

ところで、ようやくこの辺りで、イエス・キリストが生まれます。

やっと紀元前から紀元への移行です。

キリストが生まれるまでにもこれだけの壮大なドラマを繰り広げてきたローマ帝国

日本はまだ弥生時代卑弥呼すら影も形もない時代でした。

それを考えると、改めてローマ帝国の歴史の長さ、奥深さを感じます。

そんなこんなで、血筋にこだわりすぎ周りの人を犠牲にした罰が当たったのか、ことごとく家族を失うアウグストゥス

結局ゲルマン人との戦いは失敗に終わり、ここにきてようやくティベリウスを養子にしました。

引退していたティベリウスも、もう自分しかいないので再びローマに戻ります。

この人は本当にいい人だったらしく、戦場でも部下たちに慕われ、皆から愛されました。

ローマに戻ってきたティベリウスを、みんな涙を流して歓迎したとのこと。

そしてアウグストゥスは波乱に満ちた生涯を終え、穏やかな死を迎えます。

ティベリウスは2代目皇帝となるのでした。

さあ、次に彼はどんな政治を行うのでしょうか。

アウグストゥスは、無神経な面もありましたが、税金やら軍事やら選挙やらありとあらゆる法改正を行い、ローマに平和をもたらし、ローマのためにその人生を捧げた人でした。

カエサルに比べると地味な印象がありますが、立派な人であったことは疑いようがありません。

カエサルの先見の目は正しかった、ということでしょう。



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