オーデュボンの祈り 伊坂 幸太郎
2003年12月1日 新潮文庫
こんにちは、咲紗(サーシャ)です。
なんか、想像していたのと全然違いました。
てっきり推理小説だと思っていたのです。
もちろん事件も起こりますし、謎解きもありますが、決して推理小説ではありません。
ファンタジーとみればいいのか、なんなのか・・・ちょっと独自の世界ですね。
非常に現実離れしているお話ですが、なかなか面白かったです。
オーデュボンというのは、アメリカの画家であり、鳥類研究家でもあった人だそうです。
鳥を愛するあまり、いつも空を眺めていて仕事もせず絵ばかり描いており、借金のために監獄に入れられたこともあるとか。
「アメリカの鳥類」という画集が有名だそうですが、仕事で家を数か月留守居にしている間に、このスケッチを200枚ほどネズミに食いちぎられ、しばらくショックのあまり寝たきりになったとか。(そりゃそうでしょうねぇ)
私も絵を見ましたが、まるで写真を見るかのように細部まで正確に書き込まれていて素晴らしいです。
それはさておき、主人公はふとしたことで魔が差し、コンビニ強盗を企てるが未遂に終わる。そして気づくと見知らぬ島にたどり着いていました。
そこは江戸時代以来鎖国をしているという、ちょっと風変わりな島。
外の世界を知らない住人たちが住んでおり、なかでも異質なのが案山子です。
案山子、そうまさしく、田んぼに立っているあの「カカシ」です。
その案山子が、なんかしゃべるんですよね。
その案山子がつくられた壮絶な由来があり、そのために魂が案山子に宿ったようなのですが、とにかくこの案山子、しゃべるだけでなく未来もわかるのです。
その案山子が殺されます。正確に言うと、バラバラにされて、頭を持ち去られているのです。
そしてその案山子殺人事件の謎と、島にまつわる謎に主人公は巻き込まれていきます。
島には不思議な人間たちが住んでいますが、一番興味を惹かれるのは、殺人を許されている「桜」ですね。
彼がなぜ殺人を許されるようになったのか、そのへんのいきさつが知りたかったなぁ。
非常に風変わりな、ユニークな作品であり一度は読んでみる価値はあると思います。
ほんの小さな出来事やせりふが、最後に意味を持ってつながっていくところは非常にうまいですね。