咲紗の、本とチワワとコーヒーと ~愛すべき本たちとの日々~

読書大好き咲紗が、読んだ本の感想やご紹介をしていきます

百寺巡礼 第二巻 北陸① 五木 寛之

2003年9月30日  講談社

美しい文章でお気に入りのエッセイです。今回は北陸です。

五木先生はどこでもきちんとジャケットを着こなし、ダンディでとてもかっこいいのです。

第十一番 阿岸本誓寺

このお寺、屋根が何と茅葺きです。茅葺き屋根の規模としては、日本で3本の指に数えられるとか。

20~30年ごとに葺き替えなければならないので、地元住民の協力が欠かせないでしょう。

能登の中で古い歴史を持ち、真宗門徒たちの心のよりどころとなっているお寺です。

第十二番 妙成寺

能登を代表する有名な国宝「松林図」の作者、長谷川等伯の絵が2枚所蔵されています。

日蓮宗のお寺で、前田家の保護を受け、一度も大きな火災にもあっていないという奇跡のお寺です。

能登の染物屋の養子だった等伯は、33歳の時妻子を連れて江戸へ出、千利休の保護を受け、あの狩野永徳のライバルとなりました。

永徳が死に、人生の絶頂期が来たと思ったとたん、利休と息子が死にます。

そんな中描かれたのが、炭の濃淡だけで光と空気を表現した「松林図」です。

これは故郷、能登の松林の風景なのでしょう。

第十三番 那谷寺

自然の岩山や岩窟と一体となっているようにつくられているお寺です。

境内には小川が流れ、一面に苔が広がり、そして垂直に切り立った巨大な岸壁があり、洞穴があちこちにあって階段がつくられ、登れるようになっています。

洞穴の中には小さな石のお地蔵さまがいます。

ここは山岳修行者の泰澄が「神の山」として信仰されてきた白山を修行の場として開き、那谷寺をはじめ、いくつもの寺を開きました。

本殿にある千手観世菩薩像に祈りを捧げ、岩屋の中をぐるっと一巡することによって新しい人間として外へ出て来ることができる、と信じられています。

浄土へ往ってまた現世へ還ってくることを繰り返しながら、宇宙の中で生命は流れていくという真宗の「往還(おうげん)」という思想に合致しています。

第十四番 大乘寺

厳しい修行の道場として、道元の禅の精神を守り続けているお寺です。

修行僧はもちろんですが、朝4時ごろから始める座禅は、一般の人も参加自由。

参加者はほぼ毎日絶えないそうです。

隣接して野田山墓地があり、ここには前田家、そして金沢生まれの有名人、室生犀星などの墓もありますが、日露戦争で亡くなった兵士たちと捕虜になったロシア兵の墓もあります。

第十五番 瑞龍寺

第二代加賀藩主、前田利長の菩提を弔うために弟の利常が加賀藩の総力を挙げて作ったお寺です。

ものすごい広さと大きさで、当時は周囲に二重の濠がめぐらせてあったことから、寺だけでなく城郭としての機能もあったのでは、と言われています。

加賀は一揆国であり、前田家は一向一揆を恐れました。

ここは仏殿の「鉛瓦」が有名で、太陽の光を受けるとギラリと白く輝きます。

いざというときは溶かして鉄砲の弾にするため、とも言われています。

それだけ大きい寺なのに、天井画の絵が、普通は華やかなものが多いのに、ありふれた野菜や雑草の絵が多いのです。

こういうつつましい花を「雑華(ぞうげ)」というそうです。

世の中にはエリートもいればそうでない人もいる。

一人の人であっても、エリートとみられるときもあれば、名もなき雑草と見られたりします。

そのこともあるがままに肯定する。

こういう思想が流れているのではないでしょうか。

ここも地元の中学生に座禅を体験させたり、土日の朝は一般の人対象の座禅会を開くなど、お寺と一般人が縁を結べるよう工夫されています。



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