僕と妻の1778話 眉村 卓
2010年11月25日 集英社文庫
1997年にガンを発病した奥様のために、毎日短い話を書いて読んでもらうことにした作者。
2002年5月に亡くなられるまでの約5年間、1778話、1日も休むことなく書かれた作品です。
余命宣告を受けてから5年も頑張られたということは、この1日1話が功を奏したと言うべきでしょう。
この本では、その中から52話のお話が載っています。
この本のほかにもう一冊「妻に捧げた1778話」という本もあります。
そちらはまだ読んでいませんので、話がダブっているのか全然違うのか、ちょっとわかりませんが・・・・。
実は私はSFというものをほとんど読んだことがありません。
なので、ミステリーとも違う、ホラーとも違う、ファンタジーとも違う、そのSFという作風が新鮮でした。
奥様とのエピソードを抜きにして、SF短編集として読んでも、ものすごく面白いです。
あまりの面白さに、1日目で100ページ以上、2日目で200ページ以上一息に読んでしまい、2日で読み終わってしまいました。
だって面白くてやめられないのですよ。
この1日1話のルールとして
①1編は400字詰め原稿用紙3枚以上 ②エッセイにはしない ③ 病人の神経を逆なでするような、病気や人の死、深刻な問題などは書かない
と、されたそうですが、この1篇の長さがちょうどいいし、深刻でないのがまたいいのです。
読んでいて、アハハと笑うまでもなく、ちょっとニヤッとしてしまうような感じ。
これが心地よくて、どんどん読み進めてしまうのです。
また1編1編のタイトルの下に、オバケの絵が描いてあって、かわいいなーと思っていたら、作者自らが描かれたものだとか。
お話の後には、その時の心境やら状況やらを簡単に書いていらっしゃいます。
でも、1日1話ずつ考えて、原稿用紙3枚以上って結構きつい・・・・。
毎日ですよ、毎日・・・・。
いや~・・・。奥様のためとはいえ、本当に凄いことです。
奥様の病状が悪化するにつれ、作者の疲れやら何やらで精神的に参っていくのがわかります。
そして最終回は、ジンと来るものがあります。
さて、お話の中から特に気に入ったのがいくつかありますが
127話「ミニミニロボット」
ちっちゃくて虫みたいに逃げ回るロボットがかわいいです。人気作品だそうです。
174話「書庫の本」
本好きならちょっとニヤリとしてしまう作品です。
「524話「心を明るく」
これは皮肉だなー。心だけ明るくしてても問題は解決しないということです。
557話「椅子を占領するオバケ」
これも単純に面白いです。椅子をめぐっての主人公とオバケの戦いが楽しいです。
770話「シノプシス8.24」
これいちばん好きです。正にSF。これは作者も長編か中編になるかも、と思っていますが、中編でアニメかなんかになったら面白そうです。
774話「メッセージを吹き込む」
これも面白いです。本当にこんなバイトがあったらやるのになー。
1644話「作中体験」
これも正にSF。本当にこんなことが体験出来たら面白いだろうに。
こんな感じかな。
最後に娘さんがあとがきを書いていて、この5年間の夫婦の様子を語ってくれています。
作者は奥様が亡くなった後、がっくりきたのか、ずいぶん体調を悪くされたようですが、復帰して頑張って、17年生きましたが、2019年に亡くなりました。
長い17年だったことでしょう。
お疲れさまでした。