暗黒館の殺人㈠㈡㈢㈣ 綾辻 行人
2007年10月16日~11月15日 講談社文庫
いや~・・・・・、我ながらよく読んだな~、4冊も。
しかも約2,600枚。
無駄に長いです。一冊一冊が分厚い!
構想8年、連載5年というからものすごいです。
綾辻先生、がんばりました。
ただ、わけのわからない「視点」の部分はいらないです。
この作品、「黒猫館の殺人」と同じで「館」シリーズの順番のルールを知らなかったときに先に読んでしまい、今読むと、当時は訳わかんなかったろうなと思うところがいっぱいあります。
今までの作品がかなりふんだんにいろんなところに盛り込まれているのです。
これは「館」シリーズを全部読んでいなければわかりません。
はっきり言って、「館」シリーズの中ではあまり好きな作品ではありませんが、これを読まないと次の作品が読めないのです。
なので必死になって4冊抱えてがんばる羽目に。
まあ、徹底的におぞましく、おどろおどろしく、救いのないお話です。
人間、あまり長く一つの話を考えすぎるとおぞましいものはよりおぞましく、不幸なものはより不幸に、構想がエスカレートしていくものです。
この作品も、これでもかこれでもかというようにおぞましいです。
でも綾辻ワールドは相変わらず大全開。
私達はその綾辻ワールドに最初から、気づかないうちに引き込まれています。
つまり、最初からだまされているのです。
ちょっとした事故で一時的に記憶を失ってしまった、穏やかで真面目な青年。
彼はその事故に関わった、大学の先輩でもある玄児の世話になることになります。
名前がわからないので、なんとなく顔が中原中也に似ていたため「中也くん」と呼ばれることになります。
そのうち回復し、記憶も取り戻すのですが玄児は彼を「中也くん」と呼び続けます。
そして玄児は、中也を自分の実家に招待します。
その実家では年に一回あることが行われ、そこに中也を参加させたいというのが玄児の希望でした。
詳細も知らされず招待されるがままの中也は、玄児の実家「暗黒館」に足を踏み入れることになります。
そこは変わり者の主(玄児の父)が支配する、外界との関わりを一切閉ざした暗黒の空間。
そこの住人達も外へ出ることはなく、屋敷の中で閉じこもって暮らしています。
その住人達も一風変わった人たちばかり。
そして中也はその屋敷の年一回の恐ろしい宴に知らぬうちに招かれてしまいます。
さらにこの館で起こった過去と現在の殺人事件・・・。
この中也、後の運命は悲惨です。
やはりこの暗黒館のせいで徐々におかしくなっていったということでしょうか。
まあ、そりゃなるでしょうねぇ、こんなことされれば。
本人の承諾を得ず、勝手なヘリクツであんなことをする玄児が悪いです。
それから・・・よくここの住人、こんな暗い家に住めるものです。
暗いというのはムードが暗いんではなく、ほんとに暗いんです。
電気は弱いのがボンヤリついているだけ、窓は真っ暗な雨戸がしめっきり、家具も黒、壁も黒、床も黒、かかっている絵まで黒、まさに暗黒の闇。
ちなみに住人の服も黒。唯一双子の女の子の着物が少し色がありますが。
でもそのお年頃の双子ちゃんのお部屋の調度品も黒。
ちなみにネコも黒猫。
こんな家に住んでたら絶対目が悪くなるし、うつ病になります。
昼の来ない白夜の国に住む人々はうつ病が多いそうです。
人間、光が当たらないとだめなのです。
この家は、一人の気の狂った女性と、その夫で正に獣としかいいようのないクソジジイのせいで全員が犠牲になっています。
まあ、こんな狂信家どもの住む館には近寄らない方がいいですね。
おどろおどろしいのはイヤですね。
もっとさっぱりと爽やかに生きたいものです。
そしてこんなおどろおどろしいのを我慢して最後まで読んだ自分をえらいとおもう咲紗でありました。
いくら大好きな綾辻先生の作品と言えども・・・
綾辻先生、渾身の作なのですが、やりすぎです。
「館」シリーズ読破中のあなた、それともこれから読もうとしているあなた、この大長編「暗黒館の殺人」を読まなければ、次に進めませんよ~。
がんばってください。