天狗風 霊験お初捕物控 宮部 みゆき
2001年9月15日 講談社文庫
いや、これ猛烈に面白いです。
霊験お初シリーズの一作目「震える岩」もかなり面白かったのですが、今回はその何倍もすごいです。
笑わせるかと思ったらぞっとさせ、おどろおどろしいのだけれど、読後感はさっぱりとしています。
相変わらず元気はつらつなお初と、気は弱いけれど優しく、頼りになる右京之介のやり取りが本当に面白く、かわいらしく、まるで目の前で二人がポンポンと会話しているようです。
そして今回、お初はネコと話をします。
そのネコの「鉄」とのやり取りがまた絶妙なのです。
そしてなんと右京之介が、ネコが怖いということが判明します。
ネコの鳴き声が聞こえた、と思ったとたん一瞬でどっかにいなくなり、探すと遠くで隠れているというありさま。
「鉄]を見てへっぴり腰というなんとも情けない姿になり果てていて、また「鉄」もそれを面白がって、わざと鳴きまくって右京之介を怖がらせ、お初に怒られるのでした。
今回は、天狗となった女のすさまじいまでの美への執着と妄念が生み出す事件でした。
もちろんその女も、元々自分の美貌を自慢していたところがありますが、その美に執着せざるを得なくなる状況になり、ますます病的に、異常なまでになっていきます。
そしてついに怨霊(天狗)となり、一陣の風と共に若い娘たちを犠牲にしていきます。
また、立派な人なのか悪人なのかよくわからなかった倉田主水の悲しい過去、それに付随する様々な事件、それがテンポよく、ぐいぐいと呼んでいる側をひきつけます。
600ページ以上の長編なのですが、一息に読みました。
「百物語」シリーズもいいけど、「お初」シリーズもいいですね。
ところがこの「お初」シリーズ、この作品以降は出ていないらしいのです。
なんでだろ、こんなに面白いのに・・・。
ぜひこの先も読みたいのにな。
ファンとしては、お初と右京之介がどうなるのかが気になるところなのです。
たぶん結婚するとは思うのですが。
右京之介のお父さんは、すっかり認めているようですしね。
それからもし、この「お初」シリーズを読んだことがなくて、これから読むことを検討されている方、一作目の「震える岩」から読むことをお勧めします。
「天狗風」からでも十分面白いですが、やはり順番に読んだ方がその面白さがさらによくわかるからです。