星の王子さま サン・テグジュベリ
2006年4月1日 河野万里子 訳 新潮文庫
60年以上も前の作品で、新訳としてまた発売されたのが本書です。
挿絵はサン・テグジュベリ本人のもので、とてもきれいな本です。
聖書の次に読まれているという世界の大ベストセラーですね。
短くて、ほんの数時間でパッと読めてしまいますが、実は今まで何度も読みかけては挫折していました。
最初の方が面白くないんですよね。
そこを過ぎるといいのですが、なかなかそれができないのです。
今回初めて最後まで読めました。
この王子さまとバラの花との関係は、なかなか深いですね。
わがままなバラのために、王子さまはせっせと世話をしますが、バラは全然感謝も見せません。
ついに起こった王子さまは、バラとけんかし、星を出てしまいます。
しかし、星を出る時のバラの言葉と、バラと離れてみて分かった本当の自分の気持ち・・・。
王子さまは最後、星へ帰ります。おそらくバラのために。
「いちばん大切なことは目には見えないんだよ」
この作品のテーマでもあり、短いですが重要なメッセージでもあるこの言葉は、キツネの口を借りて語られたものでした。
本当にそうですね。愛とか、時間とか、信頼とか・・・・
そういうものはすべて目に見えず、心の中にあるものなのですから。
ただこの作品、やはり子供が読むには少々退屈かもしれません。
大人のためのファンタジーと言っていいでしょう。
今回私も大人になって初めて最後まで読むことができてうれしいです。
そしてこの新しい訳文は、優しく温かでとても良いと思います。
訳者も、キツネや蛇のセリフをどういう風にすれば人の心に届くかということを悩んだそうです。
決して、「わあ、面白い」という作品ではありませんが、やはり一度は読んでおくべきものだと思います。
作者、サン・テグジュベリは戦争中飛行機に乗っていて行方不明になりましたが、ようやく飛行機の残骸と遺品が発見されたそうですね。
戦争中のこととはいえ、残念です。