あやし 宮部 みゆき
2003年4月25日 角川文庫
こんにちは、咲紗(サーシャ)です。
さて、今回は大好きな宮部みゆき先生の時代もの。しかもホラーです。
やっぱりこの作品も面白い!最高です。
短い作品が9編で成り立っており、「百物語」シリーズのようなぞっとさせるようなレベルのホラーではありませんが、ジワ~ッと人の業がにじみ出るようなお話ばかりでした。
人の心というのは、ある意味世の中で一番恐ろしいものなのではないでしょうか。
9話の中から、特に印象に残ったのをいくつか簡単にご紹介します。
「布団部屋」
ジワリと怖い話です。酒屋の初代主人が店を立てる時に人を殺して敷地に埋めたたたりのため、その酒屋の主人は代々短命でした。
そこに奉公に上がったおゆうは、先にそこに奉公に行って死んだ姉の代わりだった。
おゆうはそこの奉公人たちが変に無反応なのに気づきます。
やがてこの店の習わしとして、奉公人はある布団部屋で1人で寝ることを義務付けられており、おゆうの番がやってきます。
おゆうがその夜見たものとは・・・
「女の首」
太郎はおっかさんが死んだあと、手先が器用だったため袋物屋の奉公に上がりました。
しかしやがて太郎は、自分が奉公人ではなく養子候補であることを知ります。
この家には太郎と同じくらいの年の男の子がいましたが、若だんなが手をだあしてしまった女中が赤ちゃんをさらってしまったのです。
赤ちゃんの行方は分からず、女は打ち首になりましたがその怨念が店の唐紙に生首の絵として残りました。
その生首の絵を見た太郎は・・・
他の話も、かなりインパクトのある話です。
最後の「蜆塚」は、高橋留美子の「人魚の森」シリーズを思いだしました。
江戸時代の子供、しかも貧しい家の子はいかにいい家に奉公に行くかで運命が決まりますね。
いい家というのはお金持ちということではなく、厳しくともきちんとしつけて仕事を教え、一人前に育て上げてくれる家のことです。
そうすると大人になったら自分で店を構えることもできるし、番頭になっても良いし、恵まれたよい人生を送れたのです。
人の業というのは、今も昔も変わりません。
この9つのお話も、今に通じるものがありました。