八月の博物館 瀬名 秀明
2000年10月30日 角川書店
8月という夏の物語なのに、3月にレビューを書いています。
主人公は作家の亨。ふとしたことで、小学校6年生の夏休みにあった不思議な出来事を思い出します。
それは、6年生の夏休み、図書委員のため学校に行ったトオルが、ふと通学路と違う道を行ったときに、ある洋館を見つけます。
そこで出会った美宇という同じ年くらいの黒猫を抱いた女の子と、そのおじいさんに導かれ、トオルはそこにあるさまざまな不思議な世界を見せてもらいます。
その不思議な世界はやがて時空まで超え、古代エジプトで起こった壮大な事件に巻き込まれていきます。
なかなか面白いのですが、ただ、こんな壮大な、強烈な体験をしておいて、いくら20年たっているとはいえこんなに長い間思い出さずにいるものかな?と思います。
まあ、その体験から作家になったと言えばそうなのでしょうが・・・。
また、博物館の歴史やら、エジプトの歴史など知らなかったことも多く、とてもためになりました。
それから1867年のパリ万博のことが、まるで見てきたようにリアルに描かれていて楽しいです。
この時のパリ万博には日本も出ていたのですね。侍の格好をした日本人がいたそうです。
この時初めて日本文化が、世界デビューを果たしたとか。
2025年にはたしか大阪で万博が開かれるのですよね。楽しみです。
そして最終的に、6年生のトオルと、現在の作家の亨がなぜかマッチングしていき、現在と過去がつながります。
「はてしない物語」でバスチアンが本を読んでいるときのような現象が起こります。
そして、おそらく作者が言いたかったこととは、小説とは何か、物語とは何か、ということです。
亨は昔のことを思いだしながら、このことについて考えていきます。
SFとファンタジーを合わせたような、不思議な世界の物語です。