犬はどこだ 米澤 穂信
2008年2月29日 創元推理文庫
こんにちは、咲紗(サーシャ)です。
米澤先生の書く主人公(男性)は、鋭い推理力と観察眼をもっているにも関わらず、平凡で目立たず、地味に生きようとする人が多いです。
この主人公、長一郎もまじめ一筋の人ですが、病気をきっかけに銀行員の仕事を失ってしまい、失意の中にいる人です。
追想五断章の主人公、芳光にも似ているし、インシテミルの結城にも似ています。
これはサイト内で起こる事件ですが、こういうのは本当に怖いですね。
お互い顔が見えないだけに、人間はその本性、主に内に持っている悪意をむき出しにします。
いじめが発生したり、韓国では自殺者も出ましたね。
どうして、顔が見えないと人は平気で人を攻撃するのでしょうか。
私は、そんなことを書いたらいつか自分にとんでもない形で不幸が降りかかってくるような気がして、怖くて書けないです。
本来なら犬を探したかった長一郎が実際に探す羽目になる人間、桐子は本当に頭のいい女性です。
ラストは…今まであまりこういうのはなかったんじゃないでしょうか。
ネタバレが怖いので、はっきりとは書けませんが、長一郎は結局失敗だったとみるしかないのでしょうか。
今後、彼は日々自分を殺しに来るかもしれない人物を常に意識して人生を送らなければならなくなりました。
でもこんなペースの仕事の受け方で、長一郎はこれから食べていけるのでしょうか。
他人事ながら心配です。
さすが米澤先生の作品という感じです。文句なく面白かったです。
この作品、シリーズ化の予定だったそうですが、まだ続きは出ていないらしいです。
米澤先生もいっぱい作品を書いていらっしゃるから、忘れちゃってるのかも。
でも続き、読んでみたいです。
充分に楽しめる、いい作品でした。