暗闇坂の人喰いの木 島田 荘司
1994年6月15日 講談社文庫
すごい!すごすぎる!
何という面白さ!
「占星術殺人事件」で、この島田先生は天才ではないかと思ったけれど、やっぱりこのお方、ただ者ではない。
700ページ近い大作ですが、ちっとも中だるみせず、退屈などするはずもありません。
最初から最後まで、読者をひきつけて離さない作品など、そうそうあるものではありません。
内容としては、すごい話です。
完全な変質者のある男、こいつ外人なのですが、日本に来て学校を開きます。そしてそこで日本人女性と結婚し、子供を3人もうけます。
そしてその学校の土地には、大きなクスノキがありました。
ある時、そこでこっそり遊んでいた子供が、そのクスノキが女の子を吸い込んでしまうところを目撃します。
それはまるでクスノキが、女の子を食べてしまったようでした。
時がたち、その外人は死に、子供たちは成長しましたが、やはり父親の血を引いており、どこかおかしい。
そして殺人事件が起き、御手洗の出番となります。
やはり、呪われた土地というものは存在すると思います。
恐ろしい人間の業がしみ込んだクスノキがたっているこんな場所に住んでいても、幸せになれるわけがありません。
そしてこのクスノキの恐ろしい正体。
そして「占星術~」でもそうでしたが、この犯人の孤独な人生を思うと、胸が痛みます。
最後のレオナの決意がかわいそうでした。
「一生結婚しません。この呪われた血を残さないために。」
でも彼女は、どうしようもなく御手洗を愛してしまいました。
さて、レオナの愛はこの先どうなるのでしょうか・・・
いや、しかしすごい作品です。
そんじょそこらの推理小説とは格が違います。
いい作品に出合えると、本当にうれしいものです。