咲紗の、本とチワワとコーヒーと ~愛すべき本たちとの日々~

読書大好き咲紗が、読んだ本の感想やご紹介をしていきます

火花    又吉 直樹

2015年3月15日   文藝春秋

第153回芥川賞受賞作であり、お笑いコンビ「ピース」の又吉が書いたことで、超話題となった作品。

お読みになった方もかなり多いと思います。

いや~・・・・、素晴らしい作品にまた出会えました。

元々ピースの又吉は、すごい読書家で、移動の際にも必ず本を読み、本のコラムや番組も持っていて、芥川賞をとる前から私も一目置いていました。

また彼は、太宰治の「人間失格」の熱狂的な愛読者でもあります。

お笑い芸人の十年にわたる日々を書いていますが、決して力むでもなくサラッとと書いています。

しかしその心理描写や、特に二人のキャラクターが見事に描かれています。

神谷のキャラクターとその魅力が素晴らしいです。

映画では桐谷健太がこの役ですが、それが決まる前に読んだとしても彼を連想したでしょう。

それくらいイメージがぴったりです。

思ったより短い作品でしたが、その内容はじっくりと心の中に入り、しみとおっていくようです。

あまりにもお笑い芸人であることに一途で純粋すぎ、周りとうまくやっていけない不器用な神谷と、やはり不器用ですが、そんな神谷を心から慕い、愛する徳永。

そして売れないお笑い芸人の苦悩・・・。

先輩は後輩におごるものと信じ、仕事もどんどん減っていき、追い詰められついにとんでもない行動に出てしまった神谷は、お笑い芸人として成功することはできないでしょう。

待っているのは身の破滅。

それでも又吉自身と、徳永は、神谷に深い愛情を向けます。

そして何とも言いようのない悲しみが、この作品には漂います。

芥川賞をとったのもうなずける、素晴らしい作品です。

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