超高速!参勤交代 土橋章宏
2015年4月15日 講談社文庫
題名と映画の予告編から、てっきりアハハと笑えるギャグだと思っていましたが、違いました。
意外にまじめなお話でした。
陸奥国藩主、内藤政醇(まさあつ)は幼い頃、乳母の虐待にあって閉所恐怖症。トイレのドアも閉められない。
それでも心優しく、家臣想い、領民想いのよき殿様です。
しかし、サディストであるろくでもない老中から、とんでもない言いがかりをつけられ、わずか五日で江戸まで参勤交代せよと命じられてしまう。
陸奥とは現在の青森と岩手の間くらいだとか。そんなところから五日で江戸までなんて無茶苦茶な話ですよね。
しかも政醇の湯長谷藩は超財政難。将軍に献上するものが、大根の漬物という惨状です。
「金なし、人なし、時間なし」さあ、困った。
でも行かないと、藩がお取りつぶしになってしまいます。
知恵ものの家老、相馬が必死で知恵を絞りまくり、道中は野宿、食べ物は山でウサギやイノシシを狩る、走るのに少しでも荷物を軽くしようと槍は穂先がなくただの棒きれ、刀は竹、という徹底ぶりです。
人数も、走れる者たちを集めてわずか八人。
そして、道案内の腕利きの忍び、段蔵の力を借りて山道をひたすらぶっ走る。
ほんとに大変ですねぇ・・・。
実は私、知らなかったのですが、参勤交代の時はそこここの宿に江戸の見張りがいて、ちゃんとした行列で行かないと、江戸に報告されてしまうのだそうです。
そしてその行列は、百人は超えていないとまずいとのこと。
さあ、どうする。
相馬は現地で人を借り、行列をUターンさせて二度通らせることで、人数が多いように見せかけたのです。
町民たちはひれ伏していて、見る者は行列の足だけ。同じ人が二回通ったってわかりません。
また、自分達よりも身分が高い人の行列と行き会うと、よけて、その行列が過ぎるまで待たなくてはなりません。
でもそんな時間がない湯長谷藩。またまた相馬が必死で考え、唯一行列を横切ることが許されている飛脚に化けて、フンドシ一丁になって全員で走って通り過ぎるという荒業をやってのけます。
しかも走るだけならまだしも、サディスト老中が差し向けた刺客が彼らを襲います。
しかしどんな時でも、政醇の家臣を想う心、家臣たちの政醇を想う心、そして政醇は道中、真に愛する女性と出会い、二人の愛し合う心が最後に実ることとなります。
家臣や領民の幸せは、本当に藩主次第ですよね。
アハハと笑えるわけではないですが、それでもスピード感あり、ハラハラさせてくれる展開に、ページがどんどん進みます。
最後は暖かい気持ちになれる、よいお話でした。
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