チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷 塩野七生
1982年9月25日 新潮文庫
昔は世界中どこの国も、他人の土地を奪うことばかり考えていたのですね。
イタリアもたくさんの小国があり、それぞれその国を手に入れようと狙っています。
チェーザレ・ボルジアはものすごい勢いで小国をいくつも我が物にしました。
結婚したばかりの奥さんも無視して、夢中で戦争を仕掛けてばかり。
そして絶大な権力を手に入れかけましたが、皮肉なことに没落はもっと早かったです。
没落の原因が、父である法皇と同時にかかった悪性のマラリアだったのは、ちょっと気の毒でした。
病気は突然くるし、今まで気づきあげたものを一気に崩してしまうのです。
父は死に、彼はなんとか一命はとりとめましたが、体調はずっと悪く、以前のように活動することはできなくなりました。
また、政治家としてあれほど素晴らしかった判断力も失われてしまいました。
チェーザレの敵たちは、彼が死ぬのを待ったのですが、持ち直したと知るやいなや、ものすごい勢いで総攻撃をかけてきました。
体調が悪い上に、父を失って権力も失ったチェーザレは、もうどうすることもできません。
みんなに復讐され、全てを失ったチェーザレは、31歳の若さで戦死します。
気の毒ですが、自分もひどいことをたくさんしているので、まあしょうがないですね。
ボルジア家は、毒殺で有名だそうですが、なんとなく聞いたことはありますがよく知りませんでした。
しかしこれは、ボルジア家没落後につくられた噂である可能性が高いそうです。
現にこの作者は、チェーザレのそばにいてその言動を直接見、そのことを細かく書き記したマキアヴェッリという人の著書を重視していて、その中には毒殺のことなど一切書かれていないとのことです。
チェーザレのそばにいた人が言っていないのだから、確かに信憑性は高いかもしれませんね。
チェーザレは弟まで部下に剣で殺させているから、毒より剣の方が好きだったかも。
びっくりしたのは、あのレオナルド・ダ・ヴィンチがチェーザレのもとにいて、あらゆる城や施設の建築技術を受けおっており、親しい友人だったということです。
ダ・ヴィンチは芸術だけでなく、建築もできたのか。すごい人ですね~。
また、チェーザレに攻められ、あわてて妻子を先に逃がし、自分も何もかも捨てて船に乗って逃亡したある国の専守は、船の中で愛犬を城に忘れてきたことに気づいて半狂乱になり、残った部下に、犬を連れてきてもらうように手紙で頼んだ、というエピソードは気に入りました。
わかるわ~、その気持ち。
きっと私も同じことをするに違いないです。
この人は愛犬と巡り合えたかな?それを願うばかりです。
このチェーザレという人、周りの諸国からは徹底的に嫌われましたが、部下には信頼が厚かったようです。
腹心の部下に恵まれ、忠実な彼らがいたからこそ、ここまでのし上がることができたようです。
おそらくこの人は、とても頭がよく野心家で、先を見通す力に優れていたのでしょう。
彼が病気ですべてを失っても、この腹心の部下たちは、チェーザレを見捨てることはなかったようです。
しかしまあ、あまり悪いことをしすぎると罰が当たるということでしょうか。
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