インシテミル 米澤 穂信
この本はもう何度も読み返しています。
それほど大好きな作品で、いつ読んでも本当に面白いです。
内容は、こちらも「そして誰もいなくなった」を下敷きにしています。
破格の時給のアルバイト広告をみて集まってきた、学生や主婦や、その他様々な事情でお金が欲しい人たち。
明らかに怪しいのですが、皆これは冗談だと思ってこのアルバイトに参加します。
行ってみると、全員地下の施設に軟禁され、そこである実験が行われることを初めて知ることになります。
一人一つずつの凶器をあてがわれ、そこで殺人ゲームを行うというものでした。殺したり、それを暴いたりするごとに報酬がもらえるのです。
最初皆は、そんな殺人なんかしなくても高額な時給があるのならば、ということに話が落ち着きますが、ある朝、一人の参加者の銃殺死体が発見されたことにより、事態は動きだします。
一人、また一人と殺されていき、疑心暗鬼に陥った参加者たちは、お互いを監視しあい、精神的に追い詰められていく・・・
この小説、ラストの一ページまで結構衝撃なのです。
映画化もされ、ご覧になった方も多いかと思いますが、ずいぶん内容は変えられていましたね。
それはそれで面白かったのですが、やっぱり私は原作の方が好きです。
米澤先生の作品は、一見のほほんとしているけれど、いざとなったら明晰な推理力を発揮する、という主人公が多いのですが、これもそんな大学生が主人公です。
彼は最初は暢気にしているのですが、だんだんと持ち前の頭の良さを発揮して、犯人を突き止めますが、私はこの中で一番の悪人は、犯人がだれであっても、やはり諏訪野さんであろうと思います。
誰が死んでも動揺することなく、人を人と思わず冷静に観察している。そして最後に彼女が主人公に対してとった行動の恐ろしさ・・・
作者が一番書きたかったところは、おそらくここでしょう。
ものすごく印象に残るところです。
また、この作品で私が一番好きなところは、主人公がもう一人の参加者とミステリ談義をするところです。
いろいろな作家や、作品などの事を語らいあっていて、ミステリ好きとしてはここは興味深いところです。
この作品は、ぜひ多くの方に読んでもらいたいです。
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