星籠(せいろ)の海(上)(下) 島田荘司 講談社文庫
御手洗潔シリーズで、初の映画化作品だそうです。
舞台は瀬戸内海、広島の鞆(とも)というところです。
ここは昔、村上海賊がいたところで、船の技術や海上船の技術が大きく発展したところだそうです。
そのため、ペリーがやってきたとき、幕府はこの村上海賊に協力を求めました。
その際、海軍図に書き込まれていた「星籠」の文字。
これは一体何か、という謎から、この鞆で起こった数々の事件。
それらが見事につながっていきます。
そしてあるカルト宗教に巻き込まれていく人々。
この作品では、人間の弱さとエゴがかなり表現されています。
自分というものを持たず、周りに流され、宗教にはまっていく小坂井。
いい結婚相手を見つけようと宗教に入り、結局望み通りの相手を得られなかったことから事件に発展する滝沢助教授。
赤ちゃんを殺してしまい、それを身勝手なヘリクツで責任を逃れようとする洋子。
いずれも弱い人間ばかりです。
カルト宗教は本当に恐ろしいものです。
そして今回も見事な推理を見せてくれる御手洗ですが、彼は英語だけでなく、あらゆる言語がペラペラなことが判明しました。
一体どういう育ち方をしたのでしょうか?
そして相変わらずの石岡とのコンビがいいですね。
しかしこの鞆という街、歴史的価値があり、海が本当に美しいですが、住むのはちょっと大変かなぁ、という気がします。
何しろ車がすれ違えないくらい道が狭く、家にもガレージを作る場所がないとのこと。
う~ん、運転へたくそ咲紗には、ちょっときついかも・・・・。
この作品の主役は何といっても瀬戸内海の美しさです。
でも、美しい海も、忽那が言ったとおり、人の心も美しくするわけではないのですね。