ねこのばば 畠中 恵
2006年12月1日 新潮文庫
若だんなシリーズ第3弾です。
日本一、いや、世界一軟弱な主人公、一太郎。
でも弱いのは身体だけ。
相変わらず頭の冴えはいいし、度胸も据わっているしっかり者です。
何と今回はこの若だんなが、身体の調子が良すぎて、ご飯をモリモリ食べるお話から始まります。
題名にもなっている「茶巾たまご」はなかなかおいしそうだけど、これが若だんなバージョンになると、尋常ではない量の砂糖が卵の上に乗っているというものすごいもの。
いや、卵の上にもろ砂糖・・・・?
え・・・・?
そんなのあるの・・・?
しかも当時砂糖は相当高価なものだったでしょうに、妖の手代、佐助と仁吉の手にかかれば、そんなことはものともせず、惜しげもなくドバーッと・・・・。
しかしこりゃ、相当甘いでしょうねぇ・・・。
でも食べないと、佐助と仁吉が怒るので、若だんなもなかなか大変です。
このシリーズ、妖達がかわいいし、ほんわかしたムードだけれど、内容は割とつらいものが多いです。
「茶巾たまご」の犯人が最後に言ったセリフは、ちょっと寒気がするし、「花かんざし」もどうにもならない辛い運命を背負った者の悲劇が書かれています。
「ねこのばば」も善悪の区別がつかない若い者たちの行動がおろかすぎです。
「産士」はなんと、佐吉の過去。
これちょっと怖いです。人形が人間の体を乗っ取ってすり替わるというお話。
こういう話はホラーによくありますが、やっぱり怖いです。
「たまやたまや」は、幼なじみのお春ちゃんが、一太郎のことをあきらめ、お嫁に行ってしまいます。
一太郎はどうしても、彼女を妹のように想ってはいましたが、結婚しようとまでは考えられなかったようです。ちょっと悲しいですね。
「茶巾たまご」で出てきた貧乏神、いいキャラだったけどいなくなってしまったのかな?
残念。また出てこないかな。
また「花かんざし」で、塗り壁のような化粧をする女性のことを、その心の傷と、人間としての心の良さをきちんと見抜き、彼女と結婚しようとする正三郎が優しいです。
辛い内容の中でもほっこりするところです。
でも、全体としてとても楽しいこのシリーズ。お気に入りです。
次が楽しみですね。