聖なる怠け者の冒険 森見 登美彦
2016年9月30日 朝日文庫
いや~、相変わらずの独自の世界観ですね。
この世界観、ほんとに面白くて大好きです。
独自の登場人物たち、独自の書き方、独自の会話・・・どれをとってもいいですね。
「僕は人間である前に怠け者です」
と、のたまう小和田君。
名台詞と言っていいのでしょうか、どうなのでしょうか・・・
でも、この一言は彼の人間性を見事に表現しています。
でもこの小和田君、普段はきちんとお勤めしているのです。
出身はおそらく、例によって京大。
人間としてやるべきことはそれなりにこなしているようです。
そして休日になると、徹底的に怠けるのです。
そんな怠け者の小和田君、ある時、町の正義を守る「ぽんぽこ仮面」から自分の後を継げ、と言われます。
そんな大変な仕事を小和田君がするわけがありません。
当然、ことわる。
そしてまあ、様々な個性的な登場人物たちと共に、いろんなドタバタに巻き込まれていくわけです。
ぽんぽこ仮面はいったい誰なのか・・・
まあ小和田君はそんなことには一切興味はありませんが。
舞台は京都の祇園祭の土曜日の一日。
が、しかしこの小和田君、ほかの登場人物たちがいろいろとがんばっている間、店の奥の布団が置いてある部屋でほとんど寝ております。
そしてクライマックスあたりで悠然と起きてきて、なんとなく、うま~く物事を収めてしまうのです。
このすっとぼけた感覚、私は嫌いではありません。
まあ、こんな風に生きたいものですね。
「夜は短し、歩けよ乙女」に出てきたキーワード(?)も、ふんだんに出てきます。
偽デンキブラン、天狗、下鴨幽水荘、等々。
実は咲紗、奈良県出身で、高校は京都まで通っていたのです。
だから森見先生の作品を読むと、本当に懐かしく感じます。
ところが、ついに祇園祭を一度も見たことはありませんでした。
ものすごく混むので、そんなところに行くのにちょっと勇気がなかったのです。
でもやっぱり一度は見ておくべきだったな~、とこの作品を読んでちょっと後悔。
まあ、高校生だったというのもありますね。これが大学生だったらまた違ったのでしょうが。
でも、もっと京都のいいところをよく見ておくべきでした。
なんかこの作品を読むと、小和田君に感化され自分まで怠け者になってしまいそうで危険です。
まあ、歳をとってのんびり過ごせる時が来たら、いいかもしれませんが。