サザエさん①~⑤ 長谷川 町子
おなじみ「サザエさん」の原作です。
初期は昭和21年、戦争が終わってまだ1年たっていない頃です。
だからまだ、配給や満州引き上げ、闇市などがお話にふんだんに出てきますが、サザエさんにかかれば、そんな悲惨な状況も、明るく楽しいものになります。
昔なので、サザエさんは外出は靴だけれど、家ではゲタ、カツオだって寝る時は着物です。
この時代、以前ご紹介した松本清張の「日本の黒い霧」と同時代ですが、全くそんなことは感じられません。
回が進むにつれて、サザエさんたちの生活を通じて、日本が少しずつ豊かになっていくのがわかります。
サザエさんは最初はまだ独身、途中でマスオさんと結婚しますが、いつでも明るく元気で、人には親切です。
満州から引き揚げてきた人たちのためにフトンを縫ったり、配給品を惜しみなく分けたりします。
そしてものすごく働き者です。
サザエさんはなんでも上手で、お料理、和裁、洋裁、編み物、なんでも超一流。
またとても好奇心旺盛で、いろんなものにチャレンジします。(失敗することが多いですが)
お勤めにもチャレンジするシーンがありますが、すぐなくなったので、やめちゃったのかな?
それにTVと違ってワカメちゃんはまだ幼稚園前、おてんばでカツオよりずっとやんちゃです。
最初はサザエさん一家は九州に住んでいましたが、途中波平の転勤により、東京に引っ越してきました。
これは作者の長谷川町子さんが、疎開先の九州から東京に戻り、連載も九州の新聞から朝日新聞に移ったことに関係しているそうです。
サザエさんは、モダンな女性として描かれており、あの有名な髪型も当時の流行のもの、原作には日本髪を結っている女性も登場する中、とてもオシャレです。
それからびっくりすることに、サザエさんは波平とフネを、「パパ、ママ」と呼んでいるのです!
戦争が終わったばっかりなのに、良かったんでしょうか?
アニメからは考えられないことですね。
アニメではずいぶん古風なサザエさん一家ですが、原作は決してそうではありません。
1巻の終わりに、長谷川町子さんがサザエさんのアイデアを考えていたころのマンガをのせていますが、長谷川町子さんも明るく元気で、サザエさんは長谷川さんの分身なのではないでしょうか。
当時を生きていた作者が書いたのだから、庶民の暮らしは実際こうだったんだな、ということがわかって面白いです。
読んでいて、ほんわかできる作品です。さすがサザエさん。