しゃばけ 畠中 恵
2004年4月1日 新潮文庫
「若だんな」シリーズ第一作目で、長編です。
NEWSの手越祐也さん主演でドラマになったこともあるので、ご存じの方も多いでしょう。
廻船問屋長崎屋の跡継ぎ、十七歳の一太郎は人一倍体が弱く、何度も死にそうな目に合っています。
そんな彼を、両親やお店の人たち、御付きの人たちは心配し、気を配り、ちょっと風が吹いたり、少しだけ気温が下がっただけでも大騒ぎ。
これでもかこれでもかという風に気を使って、甘やかします。
一太郎が朝ご飯を食べただけで、大喜びするのです。
しかしこの一太郎、なぜか妖(あやかし)が見え、周りも妖だらけ。
彼にばっちり付き従っている手代の佐助と仁吉も、見た目は若いが、齢何千年もの大妖怪です。
そして彼の周りには、小鬼の鳴家(やなり)や、屏風のぞき、野寺坊とかカワウソとかが集まり、一太郎に頼まれて事件の下調べをしたりします。
小鬼の鳴家は、仔犬みたいに一太郎の膝の上に乗って、撫でてもらうのが大好き。
なんかかわいいのです。(顔は怖いらしいですが)仔犬みたいですね。
なぜ、一太郎には妖が見えるのか、彼の周りには妖が集まるのか・・・
それはこのお話の謎の一つになっているので、ここでは書けませんが、なるほど、という理由になっています。
そんなある日、一太郎は周りの目を盗んでこっそり夜に外出したところ、人殺しを目撃してしまい、自分も追いかけられて、なんとか逃げおおせます。
そんなことがあってから数日後、おかしな客がやって来て、一太郎の家にある高価な不老長寿の薬を売ってくれと言います。
薬も扱っている一太郎の家では、確かにそんなものがあるのです。(もちろん聞くわけはありませんが)
しかし薬をみて、この薬は違うと言って逆上したこの客に、一太郎は危うく殺されそうになります。
幸いにも難は逃れましたが、その後同じように薬を探す人間に薬屋が殺されるという事件が立て続けに起こり始めます。
妖たちにしらべさせ、どうやらその犯人が探している薬が、自分の出生のいきさつと関係していると知った一太郎は、一大決心をします。
事件自体は結構おどろおどろしいのですが、設定の楽しさと、一太郎と妖たち、手代たちとの軽妙なやり取りが楽しく、そんなことを感じさせません。
また、一太郎自身、たっぷり甘やかされて育ったのに、身体こそ弱いですが、その心はしっかりと強い。
なかなかの大物なのです。
そして、一太郎をこれでもかこれでもかと甘やかす手代の佐助と仁吉がかっこいい。
なにしろ大妖怪なので、レベルが違うのです。
そして更に、仁吉は町を歩くと女性たちがその懐にラブレターを突っ込んでいくほどのイケメンっぷり。
昔の女性は、憧れの男性に告白するときはそんな風にしたのですね。
なかなか積極的なのです。
一太郎の容姿は特に詳しくは書いてありませんでしたが、きっとほっそりした優しい顔立ちの、上品な青年なのでしょうね。
読んでいて、とても楽しい一冊。ぜひおすすめです。
結構、長いシリーズのようなのでどこまで読めるかわかりませんが、ぜひ続きは読んでみたいです。
つい最近、シリーズの最新ものが出版されたようです。これも楽しみですね。