御伽草子 太宰治 青空文庫
カチカチ山
カチカチ山を太宰が解釈したらこうなるんだな、という感じです。
カチカチ山はかなり残酷な話ですが、タヌキがおばあさんを殺してその肉をおじいさんに食べさせるという、子供に読ませていいのか、思うくらい凄いです。
まあ、おじいさんがタヌキをタヌキ汁にしようとするのが発端なのだけど。
私が考えていることと、太宰が考えていることが一致していたのでうれしくなりました。
太宰はウサギを16歳の美しい処女、タヌキは37歳(ウサギには17歳とうそを言っている)の図々しい、醜男として、ユーモアたっぷりに書いています。
読んでいて何度も吹き出しました。
タヌキはどこへ行くにもお弁当を持っていくのですが、その中身はイタチのフンでまぶしたミミズのマカロニ。
それを見て16歳のオトメのウサギは絶句します。
そりゃ嫌われるわなぁ。
それにしても、こんなユーモアあふれるお話を書くとは。
太宰の印象が少し変わりました。
瘤取り
これも笑えます。
子供用の絵本では、こぶのあるおじいさんは正直者だけれど、太宰にかかればそうじゃない。
お酒好きで、しかし真面目で無口なおばあさんと、品行方正で酒もたばこもやらず、黙々と働く、40過ぎの独身の、聖人のような息子に囲まれ、小さくなっています。
そんなおじいさんだから、こっそり山で酒を飲んで寝てしまい、気づくと鬼たちに会い、ああいうことになるのでした。
しかしこのマジメなおばあさんと、聖人の息子は、お爺さんのこぶがなくなっても、大した反応はしませんでした。
気の毒なのは隣のおじいさんです。
この人、絵本ではいじわるじいさんのように書かれていますが、太宰にかかると主人公より非常に立派な人なのでした。
何しろ真面目なのと、とても緊張したために、鬼たちの前でうまく踊れず、不幸なことになりました。
太宰曰く、だれも悪いことはしていない、それでも不幸な人が出てしまった。
それは性格の悲喜劇というもので、人間生活の底には、いつもこの問題が流れているのだ、そうです。
浦島さん
これは、なんとも・・・・
浦島太郎と亀の会話が理屈っぽい~。
しかも乙姫様は一言もしゃべりません。
竜宮で太郎に好きなように過ごさせはするのですが、一緒にはいません。
そりゃ太郎も、竜宮にいてもつまんないわな。
太宰は、帰った後の浦島さんが、幸せな老後を過ごしたとしています。
そういう解釈もありか。
歳を取ることが不幸だというわけではありませんからね。
舌切雀
まず、でてくるおじいさんとおばあさんが若い。
おじいさんといっても、40歳くらい。おばあさんは33歳。
おじいさんは働きもせず、おばあさんは一人苦労しています。
そしておじいさんがスズメと話しているのを、若い女と浮気と勘違いして、しゃべれないようにとスズメの舌をちぎる!(こわ~)
最後、おばあさんは凍死し、おじいさんは職に就き、いい人生を歩みます。
スズメの呪いか?
なんかおばあさんが報われませんねぇ。
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