お探し物は図書室まで 青山美智子 ポプラ社
すっごく読みたかった本です。
なかなかブックオフに売ってなくて、ついに本屋さんで定価で買いました。
でもそれだけの価値はありました!
すっごくよかったです。期待通りでした。
今年の本屋大賞第二位の作品ですね。
うなずけます。
舞台は、とある小学校に隣接するコミュニティハウスの中にある図書室。
そこには、それぞれの理由で本を探している人がやってきます。
そしてその図書館にいるのは、司書の小町さゆりさん。
とにかく大きい。太っているというより大きい。
色白で、頭の上に小さなおだんご。白い花飾りのついた1本のかんざし。
なんだか「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」の紅子さんに似ています。
人によっては、白熊だの、マシュマロマンだの、ベイマックスだの、いろいろと連想されています。
そして、無心でフェルトに針を刺し、羊毛フェルトという小さなマスコットを作っています。
彼女は言います。
「何をお探し?」
その温かみのある深い声に、人はなんとなく自分のことを話してしまいます。
すると彼女は、その人が探している本を選ぶと共に、もう一冊、一見全く関係のない本を選びます。
しかしその本こそが、その人たちが心の奥で悩んでいることに、光を与える本なのです。
そして更に、彼女がつくった羊毛フェルトの付録をくれます。
この付録もまた、人々にいろんなことを教えてくれるヒントになるのです。
この本自体の表紙が、小町さんが渡してくれる羊毛フェルトのマスコットの写真になっていて、とってもかわいいです。
5編からなるお話ですが、なんとなく登場人物がつながっています。
この仕事が本当にやりたかったことなのかと迷う朋香、アンティークショップを開きたいが、踏み出せない諒、出産を機に大好きな編集の仕事から外されてしまった夏美、デザインの仕事に就くことができないニートの浩弥、定年退職を迎えた正雄。
5にんはそれぞれ、小町さんが選んでくれた本から、光を見出し、それぞれの新しい一歩を踏み出す勇気を得ます。
これを読んでいると、やっぱり本っていいなと思います。
小町さんは言います。
「作り手の狙いとは関係のないところで、そこに書かれたいくばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るんです」
ああ、確かにそうですね。
読み人によって受け取るもの、感じるものは全く違うのです。
書く人がいて、編集して、一冊の本になって、そして誰かの元にたどり着くまで、本はどれだけの人の手を通りていくのでしょうか。
今、私の手にある本たちも、たくさんの人の手を得て、想いを載せて、私のところに来てくれたのです。
そう思うと、決してほんを粗末にしてはならないと思います。
そしてこの5編の物語は、私にいろいろなものを教えてくれた気がします。
じんわりとした感動を与えてくれる一冊です。
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